症状・診療案内

Symptoms

排尿障害(尿が出にくい)
尿漏れ・頻尿(男性/女性)
血尿(泌尿器がん)
子供のおねしょ
男性不妊(ED)
性感染症(男性のみ)

排尿障害(尿が出にくい)

尿が出にくい・勢いが弱い・時間がかかる

排尿に関する症状は、①排尿症状、②蓄尿症状、③排尿後症状に分けられます。①排尿症状は、尿を出すことに問題がある症状で、「尿が出にくい」、「尿の勢いが弱い」、「尿をするのにお腹に力をいれる」などです。②蓄尿症状は、尿を溜めることに問題がある症状で、「尿が近い」、「夜間排尿のために起きる」、「尿がもれる」などです。③排尿後症状は、排尿した後の症状で、「残尿感:排尿後にまだ膀胱に尿が残った感じ」、「排尿後尿滴下:排尿後下着に尿が少しもれてくる」といったものです。通常は①②③単独では無く、これらの症状が合わさってみられます。

「尿が出にくい・尿の勢いが弱い・尿をするのにお腹に力を入れる」などの排尿症状は、膀胱から尿道出口への尿の通過が妨げられる場合(通過障害)、あるいは膀胱がうまく収縮できない(膀胱収縮障害)場合に起こります。通過障害で最も頻度の高いものは男性における前立腺肥大症で、膀胱収縮障害は男女とも神経因性膀胱で起こります。また、膀胱収縮障害は、メタボリック症候群に伴う膀胱の血流障害や加齢による膀胱の老化現象としてみられることもあります。

前立腺は膀胱の出口にあり、尿道を取り囲む臓器で、精液の一部を産生します。前立腺が肥大すると尿道を圧迫して、尿の通過障害をきたし、排尿症状を引き起こすとともに、頻尿、夜間頻尿、残尿感などの蓄尿症状や、排尿後症状も起こします。前立腺肥大症は加齢とともに有病率が増加し、70歳代では10人に1人以上が前立腺肥大症と診断されます。

神経因性膀胱とは、膀胱の運動をコントロールする神経が障害を受けるために、膀胱の働きが障害される状態をいいます。膀胱収縮障害をきたす原因疾患としては、糖尿病による末梢神経障害(膀胱の神経も含む)、腰部椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)症による膀胱への神経の圧迫、子宮がん・直腸がん手術における膀胱への神経の損傷などがあります。膀胱の収縮が障害されるために、うまく尿を出せず、排尿症状を中心として様々な症状を引き起こします。

尿漏れ・頻尿(男性/女性)

頻尿

「尿が近い、尿の回数が多い」という症状を頻尿といいます。朝起きてから寝るまでの排尿回数が8回以上の場合を頻尿といい、原因は様々ですが、過活動膀胱、残尿、尿路感染・炎症、腫瘍、心因性に分けることができます。

膀胱に十分に尿が溜まっていないのに、膀胱が自分の意思とは関係なく勝手に収縮するという病気で、急におしっこがしたくなり我慢ができず(尿意切迫感)、トイレに何回も行くこと(頻尿)になります。過活動膀胱は日本で1000万人以上の男女が罹患する頻度の多い病気です。脳卒中、パーキンソン病などの脳や脊髄の病気のために、膀胱のコントロールが効かなくなる、前立腺肥大症による排尿障害のために膀胱が過敏になる、などの原因で発生しますが、加齢による老化現象として起こったり、明らかな基礎疾患がない原因不明の場合も少なくありません。また、尿が間に合わずにもれてしまうこともあります(切迫性尿失禁)。1回排尿量は少なく、頻尿になります。

残尿とは、排尿後も膀胱内に尿が残る状態をいいます。前立腺肥大症などによる排尿障害(尿排出障害)が進行すると残尿が発生します。また、糖尿病、腰部椎間板ヘルニア、子宮がん・直腸がんの手術などで、膀胱を収縮させる神経が障害されると、膀胱がうまく収縮できなくなって排尿障害(尿排出障害)を引き起こし残尿が発生します。膀胱内に残尿があると、結果的に尿を溜められる膀胱容量が減少するために、1回の排尿量は減少し、頻尿になります。

多尿とは、1日の尿量が著しく増えた状態をいいます。膀胱や尿道に問題がなくても、糖尿病などの内分泌疾患、水分の多量摂取、薬剤(利尿剤)による尿量の増加が頻尿の原因となります。この場合には、1回の排尿量は正常(150~200ml以上)であるにも関わらず、頻尿になります。

膀胱炎や前立腺炎などの尿路感染が起こると、膀胱の知覚神経が刺激されて頻尿になります。間質性膀胱炎は原因不明で、膀胱に慢性の炎症を起こす病気ですが、長期間続く頻尿、膀胱充満時の下腹痛が特徴的です。

膀胱がんの主症状は(肉眼的)血尿ですが、まれに膀胱がんによる膀胱刺激症状として頻尿がみられることがあります。

心因性の頻尿は、膀胱・尿道の病気もなく、また尿量も問題ないにも関わらず、トイレのことが気になって何回もトイレに行ってしまう状態です。心因性なので、夜寝てしまえば排尿のことを気にすることはないので、通常夜間の頻尿はないことが多く、また朝起床時の排尿量は正常です。

夜間頻尿

夜間、排尿のために1回以上起きなければならない症状を夜間頻尿といいます。加齢とともに頻度が高くなり、日常⽣活において支障を来す症状です。夜間頻尿の原因は、大きく分けて①多尿・夜間多尿、②膀胱容量の減少、③睡眠障害に分けられます。これらの3つの原因によって治療法が異なるので夜間頻尿の原因をまずはっきりさせることがとても重要です。

尿量が多いため夜間頻尿がおきることがあります。特に内科の病気が隠れている場合は、その病気に対する治療が優先されるため、注意が必要です。

▶多尿による夜間頻尿

1日24時間の尿量が多くなるために、夜間トイレに何度も起きるものです。1日の尿量が40ml/kg(体重)を超える場合(例えば60kgの体重の人は40ml/kg x 60kg =2,400ml)がこれに当たります。水分の過剰摂取、尿量を増加させる薬剤の内服、糖尿病などの内科の病気によるものがあります。


▶夜間多尿

夜間のみ尿量が多くなり、夜間トイレに何度も起きるものです。目安として、65歳以上の方では、24時間の尿量に対する夜間尿量の割合が33%を超える場合は、夜間頻尿と考えます。寝る前の水分の過剰摂取、薬剤性、ホルモンバランスの乱れ、高血圧や心不全、腎機能障害などの内科的疾患によるもの、睡眠時無呼吸症候群があります。

膀胱容量の減少は、少量の尿しか膀胱に貯められなくなるもので、膀胱が過敏になるために起こります。一般的には、昼にも頻尿になることが多いです。

▶過活動膀胱

膀胱に尿が少量しか溜まっていないのにも関わらず尿意を感じてしまったり、膀胱が勝手に収縮してしまう病気で、トイレに急いで駆け込む症状(尿意切迫感)があるものです。脳卒中、パーキンソン病などの脳や脊髄(せきずい)の病気で引き起こされる場合もあります。


▶前立腺肥大症

男性特有の疾患で、前立腺が大きくなることで排尿がしにくくなり、結果として膀胱が過敏になることがあります。


▶その他

質性膀胱炎や骨盤臓器脱などで夜間頻尿になることがあります。

眠りが浅くてすぐ目が覚めてしまうために、目が覚めるごとに気になってトイレに行くものです。

血尿(泌尿器がん)

血尿

健診などの尿検査で、「おしっこに血が混じってます」とか「尿潜血陽性です」といわれた場合のいわゆる血尿は、腎臓や尿路系の病気のサインです。
血尿が発見される頻度は年齢とともに増え、男性より女性に多く見られます。血尿の原因としては、悪性腫瘍(がん)や結石、膀胱炎などの炎症、腎臓の内科的な病気など様々なものがあります。これらの病気をはやく発見するためには、健診や人間ドックなどによる尿検査が重要です。血尿が見つかった場合には、症状がないからと放っておかず、はやめの受診をおすすめします。

目で見て尿の色の変化はわからないが、尿検査にて血が混じっている状態を「顕微鏡的血尿」といいます。「顕微鏡的血尿」を起こす主な病気は、腎臓で血液から尿をろ過する糸球体に何らの原因があることがあります。この場合、尿に蛋白が混じっているかが重要です。また、悪性腫瘍(がん)は生命を脅かす危険があるため、早期発見が必要で、膀胱癌、腎癌、前立腺癌、尿管癌、腎盂癌などがあります。中でも膀胱癌は顕微鏡的血尿で診断される悪性腫瘍の中で最も頻度の高いがんです。尿路結石症では、ほとんどの症例で顕微鏡的血尿をともなっています。膀胱炎でも、膿尿と血尿を伴う場合があります。まれではありますが、腎臓の血管の奇形でも血尿をきたすことがあります。

おしっこが赤いなど、尿に血が混じることを目でみて判断できる「肉眼的血尿」はさらに重要です。膀胱癌の85%は肉眼的血尿を契機として発見されます。最近は検診や人間ドックなどで偶然に発見される症例が増えてきた腎癌でも、血尿を契機に見つかることも少なくはありません。

血尿を指摘された場合、尿検査のほかにまず超音波検査を行います。超音波検査は簡単に行え、また痛みもなく、がんや尿路結石の有無などさまざまな情報が得られる有用な検査です。進行した前立腺癌では血尿が見られることがあり、PSA(前立腺特異抗原、prostate-specific antigen)検査を行います。血尿の原因疾患が疑われた場合には、さらにCTやMRI、採血、膀胱鏡などいろいろな検査を行っていきます。特に肉眼的血尿は膀胱癌などの疑いがありますので、尿のなかに癌細胞が混じってないか尿細胞診という検査と軟性膀胱鏡を用いて膀胱の中を観察したりします。早期発見は体に対する負担の軽い治療と根治性の高い治療が可能になり、大変重要です。

子供のおねしょ

おねしょ(夜尿症)

子どものおねしょ(夜尿症)は、「5歳以上で1か月に1回以上の頻度で夜間睡眠中の尿失禁を認めるものが3か月以上つづくもの」と定義されます。
7歳児における夜尿症の割合は10%程度とされ、その後は年間15%ずつ自然に治るとされますが、0.5~数%は夜尿症が解消しないまま成人に移行するといわれており、生活指導をはじめとする治療介入により、自然経過に比べて治癒率を2~3倍高めることができ、治癒までの期間が短縮するといわれています。
小学校入学後も夜尿症が続く場合は、小児科あるいは泌尿器科を受診することをお勧めします。夜尿症患児は夜尿のない対象のお子様と比較して、有意に自尊心が低いとの報告もあり、夜尿症が改善したお子様では自尊心の回復が見られたとの海外の報告もあります。

夜尿症は親の育て方や子どもの性格の問題ではありません。その原因としては睡眠中に膀胱がいっぱいになっても、尿意で目をさますことができないという覚醒障害を基礎としています。この覚醒障害に加えて、睡眠中の膀胱の働きが未熟である(膀胱の容量が小さい、ある程度膀胱に尿が溜まると膀胱が勝手に収縮してしまう、など)ことや夜間尿量が多い(夜間多尿)ことが重なると発生します。

まず生活指導や行動療法を開始し、効果が乏しい場合には抗利尿ホルモン剤投薬または夜尿アラーム療法を追加します。
夜尿症のみでなく昼間の尿失禁など昼間の症状を伴うものも数10%に認め、これらに対しては昼間の症状の治療を優先します。

▶生活指導及び行動療法

就寝前にトイレに行くことや夜間の水分摂取の制限などがあります。


▶抗利尿ホルモン剤

夜間尿量を減少させる効果のある薬剤で就眠前に使用します。舌下投与で容易に溶ける口腔内崩壊錠ですので水なしでも容易に服薬できますが、水中毒を防ぐために就眠前2-3時間以内の水分制限が必要となります。


▶アラーム療法

濡れたら鳴るブザーで患児を夜尿直後に起こす治療で、自分で起きない場合は家族の協力が必要となります。この治療がなぜ夜尿に有効かはわかっていませんが、多くの場合は朝まで尿失禁をせずに持つようになり、睡眠時の膀胱容量が増加すると考えられています。

男性不妊(ED)

男性不妊症

きちんと膣内に射精できているのにパートナーが妊娠しない。通常の性生活にもかかわらず1年以内にパートナーが妊娠しない場合を不妊症といいます。パートナー(女性)だけに原因があると思っている方が多いのですが、約半数は男性側にも原因があるとされています。パートナーだけの問題でなく、男性も自ら精液検査を受けてみることが大切です。

不妊症治療専門クリニックでない当院では、自宅で精液を採取しクリニックに持参して頂いた検体を検査会社に委託して検査しています。採取から検査までの時間や紫外線などが精子の運動率に影響がでてしまいますが、精子濃度・正常形態率などは問題ありません。しかし、男性不妊症は原因不明のことが多く、精液検査に何らかの異常があっても1/2~2/3は原因がはっきりしません。

勃起力の低下(ED)

勃起障害は英語でErectile Dysfunctionといいますが、その頭文字をとってEDと呼びます。EDは種々の原因で起こります。EDの主な原因としては、加齢、糖尿病、肥満と運動不足、心血管疾患および高血圧、喫煙、テストステロン低下、慢性腎臓病と下部尿路症状、神経疾患、外傷および手術、心理的および精神疾患的要素、睡眠時無呼吸症候群などがあります。また服用中の薬剤による副作用が原因でEDとなる場合もあります。
単に「年のせい」だけなく、メタボリック症候群のような生活習慣病もEDの大きな原因です。また、心血管疾患(心筋梗塞、狭心症など)の患者さんの多くが、その発症前にEDを自覚しています。高血圧で41.6%、糖尿病で42%、高脂血症で20%の患者さんがEDであったというデータもあります。EDになったら他の全身疾患が進行しつつあるかもしれないため、たかがEDと侮ってはいけません。

EDを自覚したら泌尿器科を受診してください。全身疾患の前触れかもしれません。高血圧や糖尿病が見つかるかもしれません。そのような病気があれば、その治療も行い、そしてEDの治療も積極的に受けてください。ED治療薬は勃起を良くするだけではなく、全身の血管の働きも良くする作用も認められています。現在3種類のED治療薬が使用できます。インターネットなどで販売されている薬は偽物が多く、有害な物質が含まれている可能性もあるので、決して手を出さないようにしてください。正規のED治療薬は医師の処方箋が必要ですので、当院を受診してください。

性感染症(男性のみ)

尿道口から膿が出る(尿道炎)

尿道口から膿が出るのは、尿道口から侵入した病原菌が逆行性に尿道の粘膜に感染し「尿道炎」を起こしているためです。尿道炎は主に性行為によって起こります。そのため、感染を予防するにはコンドームの使用がすすめられます。性行為後2~7日の潜伏期間を経て尿道口から濃い膿が多量に出て、強い排尿痛を認める場合は淋菌による尿道炎(淋菌性尿道炎)が疑われます。一方、性行為後1~3週の潜伏期間の後に尿道口からやや水っぽい薄い膿が少量出て、排尿痛が軽い場合はクラミジア性尿道炎が疑われます。淋菌やクラミジア以外の微生物が起炎菌(非淋菌性非クラミジア性尿道炎)もあり、また尿道炎は、普通の腟性交の他、オーラルセックスでも起こることがあります。

クラミジアは普通の顕微鏡では観察できず、白血球のみが認められます。淋菌の確認は培養法、または遺伝子増幅法(PCR)という淋菌に特異的な遺伝子を増幅して検出する方法で行います。クラミジアは培養するのが難しいため、遺伝子増幅法(PCR)で確認します。注意しないといけないのは淋菌性尿道炎の20~30%にクラミジアが混合感染している場合がありますので、淋菌性尿道炎ではクラミジアの検査も同時に行うことがすすめられます。

尿道炎の治療には抗菌薬を使用します。現在、わが国でみられる淋菌では経口の抗菌薬が効きにくいため、淋菌と診断されたら、強い殺菌力を示す注射薬を1回静脈投与する治療法がすすめられています。クラミジアは経口の抗菌薬が効きますが、症状が軽くなっても必ず毎日内服し、最後まで続けることが重要です。中途半端に中止すると再発する場合があります。淋菌やクラミジア以外の微生物が起炎菌(非淋菌性非クラミジア性尿道炎)もあり、最初に処方された抗菌薬で治りにくい場合には別の抗菌薬を内服する必要があります。そのため、内服終了後にも受診し、治癒していることを確認することも重要です。
性感染症としての尿道炎の場合、ピンポン感染(ピンポン玉のやりとりのように、病原菌をうつしたり、うつされたりを繰り返すこと)を防ぐために、パートナーも一緒に検査と治療を受ける必要があります。